これまでの活動レポートで、福島原発の近くでは放射線への不安が重くのしかかっていること、 そして安心するにたる情報が少ないこと、さらに除染が有効な解決策であることを述べてきました。 志縁プロジェクトとしても、放射能影響の認知と除染のサポートをしたいと考えていますので、 8月7日~9日の三日間、日本原子力学会クリーンアップ分科会の天野治 さんの活動に随行しました。 天野さんは原子力開発機構の工学博士で南相馬市出身、ご家族は鹿島区在住です。 彼の講演と除染実験の内容をご紹介させていただきます。 ■ 太田地区 『放射能の除染について』 講演&実技指導 ![]() <8月7日(日)13時~ 16時> =参加者 約80名= 太田行政地区は原町区、20km圏の少し外側に位置します。 (右図の南相馬市の中央付近です) 空間線量を、200mのメッシュで測定してマップをつくりました。 マップ作りには地元の高齢者が結束して取組み、GPSを併用 することで、精度の高いデータを作ることができました。 海に近いところの空間線量率は0.5μSV以下ですが、 山側は3.8μSV以上と高くなります。 (右下の図で、青が多いところは海側、オレンジは山側です) 【講演】 ◎大田区としてどう対応すべきか ・ 年間被ばく量を減らすために、最優先でクリーン化をする ![]() ・ クリーン化は住民参加型で、地区全体として行う ・ かかった費用は、電力、国の補償金で賄うよう働きかける ◎線量低減の考え方 ・住民の皆さんと相談しながら、来年は今年の半分を目指す。 さらに数年でその半分にする ・住民ができるところは住民が、住民ができないところは地元の 業者ができるようにし、地元に仕事をお金が入る仕組みをつくる ◎ 放射性物質の状態 ・ 放出が止まってはいないが、3月13日~3月22日のピークに比べれば、1/100以下に減少している ・ ゆえに、3月に地表に落ちた放射性物質だけに注意すれば良い ・ 大半は地面に付着した。この地面から現在も被ばくしている ・ 呼吸や食物摂取により、取り込んだ放射性物質は物理的半減期で減衰するとともに、新陳代謝により体外に排出される。 ・ アスファルト、コンクリートには強固に付着している。 ・・・なかなか落ちない ・ 校庭、畑、田んぼ では深さ5cm程度に電気化学的に付着 ・ 沈殿したセシウムは水に溶けにくいので、飲料水には入り込みにくい。 ◎ 家の周りのクリーン化の実際 ・ 雨どいなど高線量地点の測定 ・ クリーン化の方法の検討・実施 (寝室などを重点に) ・ 家屋の中心部の測定 (複数点) ・ 家の周りの 除染方法の検討、一部実施 ・ クリーン化実施後の測定 ・ 結果の考察 【実技指導】 片倉公会堂の実技指導 ◎ 片倉公会堂の周囲の除染 ・雨どい下のアスファルト溝に土を25cmほどかぶせる 除染前 (20~24μSV) ⇒ 除染後 (7~10μSV) ◎ 田んぼの除染 ・除染前 2.1 μSV ↓ ・表土を5~10cmはぎ取る 0.7 μSV ↓ ・新しい土をかぶせる 0.6 μSV ※南相馬市のHPに載っています。 ↓ 写真で見る東日本大震災 ↓ ★ ポイントを学んで線量低下を - -------------------------------------------------- ■ 「放射能から母体、子どもを守るために」 講演会 <8月8日(月) 10:00~12:00> 原町第三小学校 =参加者 約150名= 【講演の趣旨】 ・現状は、お母さんが不安を感じ子どもも戻ってこれない、 お年寄りも心配だから表に出たがらない。 ・なんとか安心できる街に戻すためにクリーン化に取り組む。 ・住民と行政が一緒になって取り組むことが大切。 ・自然が豊かで、美味しい食も豊かな浜通りに産業を再興したい。 【講演メニュー】 1.放射能の人体への影響 ・健康に害が出る放射線量は? ・乳幼児は大丈夫か ・体に入った放射性物質は ・飲食で注意することは ・洗濯物を干しても大丈夫か ・雨に濡れても大丈夫か など 2.これまでの被ばく、今後の被ばく 3.今後少しでも地域を綺麗にする方法 4.農作物を放射能から守る方法 5.浜通り地域で子どもを豊かに育てるための復興は 【主な質疑】 ◎ 田んぼをトラクターでやったらどうなるか?(バックホーやミニショベルでは広いところは難しい) ⇒ トラクターでやっても線量は下がる。 (2μSV以下なら、やる必要がない) ◎ 3歳と9歳の子どもがいるが、庭は0.7μSV。 空気中に放射能が飛んでないと言われても安心できない。 ⇒ 除染によってできるだけ下げるのがよい。 ◎ 南相馬から一万人以上が避難している。 年間20mSVの根拠がはっきりしない。 子どもが戻ってくるには大丈夫という保証がいる 。 いろんな先生が来ていろんなことを言う。不安に感じた人は街から出ていって戻ってこない。 ⇒ 20mSV ⇒ 10mSV ⇒ 5mSV というように計画的に下げていく。 除染は継続していくことが大切。 ◎ 避難準備地域解除の話があるが、安全と分かってないのに、解除して良いのか? ⇒ 次の点を明らかにしていく (行政の方の答) ① 復興のためのインフラ復帰 ② 除染をどうするか ③ 除染した物質の最終処分 ◎ 学校の除染はいつ頃できるのか? ⇒ 除染方針の優先順位 (行政の方の答) ① 子どもが利用するところ ② 幼稚園、学校、通学路 ③ 鹿島⇒原町 除染カレンダーを作っている 終了後も、「どこまで除染したら大丈夫だと言えるのか」「幼児はいつになったらホールボディカウンターを受けられるのか」などの質問が相次ぎ、皆さんの切実な問題であることが良く分かりました。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■ 馬場地区 水田の代掻きによる除染実験 <8月8日(月) 13:00~ 16:30> 馬場地区の田んぼ 馬場地区は原町区ですが、山に近いところは線量が高いです。 右の写真のように、作付ができず雑草が生い茂っています。 この水田の代掻き前後の線量を計測します。 ① まず草刈りをします ② 次にバックホーで表土をはぎます ③ 田に水を入れた後の変化を測定します 鉛の遮蔽版を置いて、田んぼの放射線値を測定する天野さん トラクターで代掻きをします 代掻き後に水を入れます ---------------------------------------------------------------------------------------------- ■ 馬場地区 「放射性物質除染の意見交換会」 <8月9日(火) 9:30~12:00> 馬場公会堂 =参加 約50人= 馬場地区は特定避難勧奨地点にもなっていて線量が高い地域です。 放射能は毎日の暮らしとほんとに密接に関わっており切実な問題です。 田んぼ・畑のクリーン化、家の除染、日常の生活など多岐に渡る質問が 出て、熱い意見交換が交わされました。 【質疑】 ◎ ヒマワリの茎、種へのセシウムの残量は? ⇒ 分析結果はお知らせするが あまり吸着しない。 (除染効果も少ない) ◎ ジャガイモ、ブロッコリーへの影響は? ⇒ 土の放射線量の 1/6~1/7程度 ◎ 米を作っても大丈夫か ⇒ 米に移行するのは 1.2%程度。 5000ベクレル/㎡ 以下の水田なら問題ない。 200ベクレルを超えたら再検。 ◎ ビニールハウスを通すのか? ⇒ 放射線は通すが放射能は通さない。 ゆえに今つくっている作物にはほとんど影響がない。 ◎ 葉っぱを燃やしても良いのか? ⇒ セシウムの沸点は600℃以上。 普通のたき火なら大丈夫。 ◎ 自分で除染をするのは納得できない。 (自分が事故を起こしたわけではない) 東電がやるべきだ。 ⇒ 個人でやったものの費用を請求して払ってもらうように動いている ◎ 何μSVに下げれば良いのかという努力目標を示して欲しい ◎ 作物を作れる、作れないの指示を早く出して欲しい。 ⇒JAとして早めに出していく ◎ 自宅で作った作物を食べても良いのか? ⇒ 地域で出荷制限がかかってない作物なら大丈夫 基本的に、3.11の時に葉が出てなければ大丈夫 ※県は、「自宅で食べるのは良いが、人にあげてはいけない。」 と言っているが、おかしな話だ。 ◎ 家庭用野菜をどこかで測ってくれないか? ⇒ 今の機械は 1000万円 (右の写真) (富士電機の機械が発表されたが450万円) ⇒ 簡易型の機械を原町地域におきたい。 南相馬市ではちゃんと測ってくれるということで安心を示したい。 ★ 馬場地区は、避難勧奨地点の雨どいで 189μSVが計測されたとのことです。 皆さんの真剣なやり取りに圧倒されました。 何らかのお役に立てるようになりたいと強く思いました。 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ |
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