【012】継続的支援の仕組みづくり W/S

2011/07/28 6:48 に Hiroshi Nakayama が投稿   [ 2011/07/30 1:24 に Hiroshi Nakayama さんが更新しました ]
6月18~19日、亘理町で開催された「震災の継続的支援の仕組みづくりワークショップ」に参加しました。
いろいろ啓発されるところが多かったので、レポートさせていただきます。

今回の催しの正式名称は「社員ボランティア派遣モニターツアー」

■ 趣 旨
 復興に向けてまだまだ人手不足が深刻な被災地。震災後、宿泊客が激減した被災地の宿泊施設。社員ボランティア派遣へのニーズが高まる企業。継続的かつ着実な被災地復興を実現するにあたり、これら三者が有機的に結びつく必要性が日に日に高まっています。
 そこで、その架け橋となるべく、企業CSRの普及啓蒙に取り組んでいる(株)クレアンと、島根県隠岐郡海士町で持続可能なまちづくりを実践している(株)巡の環と共同で、社員ボランティア派遣の新しいスキームを構築しました。

■ 狙い (ブログ作者の解釈も混じってますが…)
 ① 被災地:現地ニーズへのマンパワー充足とともに、宿泊することにより経済的な貢献も果たす
 ② 企業: 社員がボランティア体験を通して、社会的役割を考え、かつ自らの成長に繋がる
 ③ 中間支援団体:ボランティア活動への理解を深めるとともに、事業化への道筋をさぐる

■ 主な内容
【一日目】18日(土)朝 ~宮城県亘理町集合
 ・オリエンテーション      9:10~9:30
 ・ボランティアワーク体験   9:30~16:30
 ・沿岸部の被災現場訪問    17:00~18:00
 ・宿でプレワークショップ    21:00~24:00

【二日目】19日(日)夕方 亘理町解散
 ・ワークショップ       8:30~12:00
 ・コミュニティカフェ訪問   13:00~14:00
 ・行政職員との意見交換   14:30~16:00
 ・全体振り返り        16:00~16:45

■活動場所 宮城県亘理町 
 宿泊場所 宮城県蔵王町 遠刈田温泉

■参加メンバー 約20名 (主催者側含む)  
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【一日目】
■ ボランティアワーク
 一班は、亘理町のイチゴ農家のハウスのヘドロ出し、
 もう一班は、山元町の民家の床下のヘドロ出し の二つに分かれて作業です。

○山元町チーム:民家の床下のヘドロ出しの作業
 床板を剥いで、堆積したヘドロを取り出し、一輪車(ネコ)で外に出します














泥かきが初めての人もいましたが、皆で話し合いながら作業手順を改善します。
総勢10名ほどで作業をしたこともあり、わりと早いペースで片付いていきます。
この日は、薄曇りぐらいのお天気だったので、わりに作業しやすくかったです。

○昼休みには午前中の作業を振返り                          ○今日の作業は終わりました
 ワークシートに記入                                     多少残すのが、活動の継続に繋がるとか…        















昼ごはんの時や作業終了後に、依頼主の奥さんからのお話を伺いました。
 ・津波はわりとゆっくりと水かさが増えていき、二階に避難して難を逃れたとのこと。
  一階の部屋の1.5mぐらいまで水の跡がついていました。
 ・海岸の松の木や、近所の家で飼っていた闘鶏が流れ着いて、処理がたいへんだったこと、
 ・プロパンのボンベがガスを噴き出しながら流れていて恐怖を感じたことなどを伺いました。
・・・ご家族も皆ご無事でなによりでした。
   (この一帯の被害もそれほど大きくなかったようです) 

作業の拠点=山元町ボランティアセンター前で、

 この日お世話になった内藤リーダー、
 河西リーダー、
 そして内藤組の古田さんも一緒に。
 お疲れ様でした~!

 内藤さん、お世話になりました!!
 またよろしくお願いします。


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■ 山元町の被災状況
 人口:約 16,700人
 死者:672人  行方不明者 32人 
    (人口の約4%が犠牲になられた)
 全壊家屋: 2,167棟 (うち流出 1,012棟)
 大規模半壊: 525棟

 町の面積の半分近くが浸水し、大きな被害を受けました
 ⇒ 町内浸水範囲概況図
 ⇒ 東日本大震災における被災状況

 南部にある中浜小学校は、二階の天井の上まで津波に襲われました。
体育館の中も激しく壊れていました。  
また近くの墓地の墓石はすべて流されていて、津波の強さが分かります。
幸い、生徒たちは避難して全員 無事でした。











周りには何も残っていません・・・

が、よく見ると、何もなくなってしまったところに逞しく残った木が一本。
復興の木?、再生の木?、希望の木?
「命はめぐり、かならず蘇ります。 明日に向けて希望を持って生きていきましょう!」 
 ・・・というのが案内していただいた松島さんのメッセージです。

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宿泊は遠刈田温泉の「ゆと森倶楽部
ボランティアのあとで温泉にゆっくり入れるのはホッとします。
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【二日目】
■ワークショップ

◎まず、昨日のボランティア体験を通しての気づきを共有
 ファシリテーターは「イマココミライ」代表の森田英一さん
 ・・・穏やかで温かいお人柄に、誘われて話が拡がります。

 ・被災した人たちは
  「これからどうなっていくのか」に関心
   ~海岸近くに家を建てられるのか?
   ~鉄道はどうなるのか?
   ~復興計画はどうなるのか?
  「自分たちがどうしたいか」を考えるのは 
   難しい状況にある

 ・「喜んでもらえる」と「自分もうれしい」
   ~ここには Win=Winの関係がある

 ・現地と繋がりながら一緒につくって行けるのが理想
   ~専門職、ボランティアが開きあう「新しいつながり」

 ・現地の支援者がうまく機能することが大切
   ~この人たちの生活をつくることがいる
   ~人づくり、コーディネーターづくりが重要
   ~ボランティアの継続な居場所が必要

◎ 話し方・聞き方の四つのレベル

 U理論(オットー・シャーマー)による考え方 
「討論」ではなく ⇒「対話」へ
  ・いかに説得するか ⇒ ・話を聴くこと
  ・いかに話すか   ⇒ ・話を感じること

メンバーが対話を通じてレベルを深めていくことで、「開かれた意志」を共有することができる。

これによって、
 ○ 立場や役割を超えた対話が可能となり、イノベーションが生まれる
 ○ 取り組むことへの共通認識が生まれ、一人ひとりが自律的に行動する
 ○ ビジョンを共有し、その実現に一丸となって取組み始める

◎今、そしてこれから被災地に本当に必要なこと


 ◆ まず経済
  ・生活の糧を得ることが第一
   ~漁業、イチゴ、観光、みなダメになった
    ⇒新しい産業を興す

 ◆ どんな街に住みたいのか?を考える
  ・コアな人たちが価値観を共有する  
   ~ 当事者が集まる対話の場をつくる
   ~ でも、親戚とかに居て街に居ない人もいる
  ・現場を纏めるリーダーが必要
   ※ 現場リーダーライセンスを新設して、勉強する場をつくったら良い

 ◆ 復旧レベルでなく「新しい社会創造」へ
  ・ブレークスルー(大転換)が必要
  ・ 軸となるのは価値観
    そのうえでライフスタイルが生まれる
  ・「被災者の人たちと」と「外部の人たち」
    両者をつなぐ『コーディネーター』必須

★ 未来に向けて…
    今までの問題(不安)を解決するための
    『街づくり&コミュニティづくりプランナー』を育てる 


 ◆議論の場はなにを大切にするのか?
  ・地元発が大切 ・・・外からの押しつけはダメ
  ・自分たちが生まれ育った街を大切に
    ~街の歴史、流れをきちんと捉えること
    ~100年経ったら納得できる街づくり (1000年スパンで考える)
  ・軸を誰がつくるのか?
    ~沿岸部/高台側 ? 
    ~住民 /企業 /行政 ?
  ・価値観/ビジョン ワークショップ 
   (どんな生き方、生活をしたいか)

◎どうやったら継続的な支援ができるか


 ◆現地の人との想いの共有が大切
  ・まずは一緒になんとかしたいと思うことが肝心
  ・マインド醸成や、トレーニングの場をつくる
  ・なんといっても一緒につくっていくこと

 ◆継続的な支援は雇用の創出だ
  ・義援金を出すよりも仕事の場づくり
  ・自社から社員を1人送り出して事業を始める
  ・地元雇用を生み出す産業
  ・やりたいという声を集めてビジネスに繋げる
  ・ICTの活用
  ・心が動くようなもの

 ◆ ボランティアが胸をはってやれる環境をつくること
  ・ボランティア・リーダーファンドを確立したい

爽やかな初夏らしい青空が広がって・・・、コテージ(ヨガハウス)横でパチリ














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■ 行政の方のお話を伺います @亘理 悠里館

◎ 亘理市 南部洪秀さん (震災復興推進課 副班長)

○亘理町の課題
 ・ガレキが100年分相当ある  ⇒ ガレキ処理が終わらないと次にいけない(分別をどうするかも含めて)
 ・イチゴ農家の 8~9割は被害 ⇒ 住まいと産業の再生
 ・復興プランの整合                 ⇒ 一戸一戸の異なるニーズをどう束ねるか

○どういうビジョンを描くか?
 ・安全安心の再構築   ⇒津波への安全対策
 ・ 住むことへの愛着   ⇒ 7月から「どこに住みたいか」意向調査
 ・8月までに草案 9月議会で審議 年内に纏め
 ・役所のプランの周知
   ~集落ごとに聴いて合意形成
   ~複数案を用意する

亘理町災害ボランティアセンター 所長 佐藤さん

○ボランティアセンター運営の課題
 ・被災者、行政、ボランティア、それぞれに視点が異なる
 ・被災者のニーズは日によって変わる
 ・住民の意見も特定の人との関係になりがち
 ・満足、不満足のコメントも人によって異なる
  ~メディアも特定の情報を伝えたがる

○ボランティアセンター運営で大切なこと
 ・最終的に「亘理町を良くしたい」という気持ちは一緒
 ・マネジメントは絶対否定しないこと
  ~みんなの意見を大切にする
 ・自分たちが工夫してやりたいようにやっていく
  ~フレキシブルに対応する
  ~ニーズ票、レイアウト、次々と変更

○ボランティアセンターの心がけ
 ★笑顔で、雰囲気よく、自分たちがやりやすいように

 ・ボランティアは町の為にきてくれるなら誰でもよい
  ~町のことを知ってくれればよい
  ~物見遊山でも良い
  ~迷惑な人は来なかった

≪感想≫
亘理町のボランティアセンターはとても素晴らしい運営で、他の見本となるところです。
これができたのは、次の二つの理由だと感じました。
 ① 所長の佐藤さんのお人柄 (いつも明るく、笑顔で、人の意見を聴く、任せる)
 ② 社協と町役場との仲が良い


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■全体纏めと振り返り


◎ 亘理町ボランティアのこれから
 ・片づけ(泥かき)は6月末ぐらいで道筋がつく
 ・継続的に関われるようなことをつくっていきたい
 ・定期的なボランティアミーティングをやりたい
  (今年はお祭りがない)

◎ 亘理ファンを増やす今後に向けたアイデア
 ・ イチゴオーナー制を取り入れる
 ・ イチゴ新作料理のコンテスト
   ~有名シェフにも加わってもらう
   ~商品化もする
 ・ ボランティア祭りをやる
   ~秋以降に サッカー場で?
   ~関わった人みんなに呼び掛ける
   ~キャンドルナイト

◎今回のイベントの感想
 ・いろんな人がいて、多くの気づきが得られた
 ・これから先のボランティア活動を考えるきっかけになった
 ・街づくりに向けた協働の取組みについてのヒントが得られた

 ・参加者の多くは「ボランティアをやりたい人」であり、企業人の参加が少ない
 ・当初の狙いである「社員ボランティア派遣」のPRにはもっと工夫が必要
  ~そもそも、企業人の震災復興支援への関心が薄れているのではないか?
   ⇒ いかに喚起するかが課題ともいえる
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